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2007年08月12日

平成元年・民法第1問

 Aは、Bに対し、自己の所有する中古のステレオ・セットを贈与することを約し、Bへの送付をCに委託した。ところが、Cによる輸送の途中、Dがこのステレオ・セットを盗み、Eに売り渡した。
(一) この場合に、A、B及びCは、Eに対し、ステレオ・セットの引渡しを請求することができるか。
(二) A、B、Cいずれもがステレオ・セットを取り戻すことができなかった場合に、BがAに対してすることができる請求及びAがその請求を拒むことができる根拠について説明せよ。


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答え

小門(一) この場合に、A、B及びCは、Eに対し、ステレオ・セットの引渡しを請求することができるか。

・請求の根拠@=所有権に基づく物権的返還請求権としての動産引渡請求権
  中古のステレオ・セット(=特定物)の所有者は誰?
    贈与契約による目的物の所有権移転時期=契約時(∵176条)
    →AB間の贈与契約により中古のステレオ・セットの所有権はBに移転(→Aは返還請求できない)→所有者はB
(ちなみに、BのEに対する所有権に基づく物権的返還請求権としての動産引渡請求権の請求原因事実(kg)=B所有+E占有)
・請求の根拠A=占有回収の訴え(200条1項)
  誰が主張できるのか
   中古のステレオ・セットの占有、AからCに移転(C占有中に盗難)
    →占有者Cが主張できるできる

しかし、Eの抗弁
  対B 即時取得(善意取得、192条)の抗弁(←Eが悪意または有過失である、とのBの再抗弁)
    DE間の売買契約+占有者DからEへの売買契約に基づく目的物の引渡し
    (善意・公然・平穏は186条1項により暫定真実として推定される。無過失は188条によって占有者が通常、権利者であると推定される)
  対C EはDの特定承継人である(200条2項本文、DE間の売買契約+占有者DからEへの売買契約に基づく目的物の引渡し)
  (←Eが(Dの侵奪について)悪意である(200条2項但書)、とのCの再抗弁)

 →if E=悪意、BCともに返還請求可
  if E=善意有過失、Bは返還請求可・Cは返還請求不可
  if E=善意無過失、BCともに返還請求不可
  

小門(二) A、B、Cいずれもがステレオ・セットを取り戻すことができなかった場合に、BがAに対してすることができる請求及びAがその請求を拒むことができる根拠について説明せよ。

 A、B、Cいずれもがステレオ・セットを取り戻すことができなかった場合
  →AのBに対する贈与契約に基づく目的物(特定物、ステレオ・セット)引渡債務は履行不能
  →BのAに対する損害賠償請求権・贈与契約の解除権発生
  →BはAに対して損害賠償請求または損害賠償請求・贈与契約の解除ができる
 
 BのAに対する請求を拒むことができる根拠
  @贈与契約の解除(撤回)、しかし「履行」済み→贈与契約の解除(撤回)は不可
  A履行不能について帰責性がない、しかし履行補助者Cの過失は債務者Aの過失と同視できる
  →履行不能について帰責性がある
 →根拠ない

関連知識

贈与契約の効力
http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/51123257.html

550条「履行」「書面」の意義(贈与契約)
http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/51123151.html

売買契約の効力
http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/51122961.html

物権的請求権(明文規定はない)の根拠
http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/51122833.html

履行補助者の故意・過失
http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/51020004.html

善意取得(即時取得)の趣旨
http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/50896636.html

関連条文

占有権 http://6hou.web.fc2.com/minzaisan/180-205.html
(占有の態様等に関する推定)
186条1項  占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
(占有物について行使する権利の適法の推定)
188条  占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
(即時取得)
192条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

(占有の訴え)
197条  占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。

(占有保持の訴え)
198条  占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

(占有保全の訴え)
199条  占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

(占有回収の訴え)
200条  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
200条2項  占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

売買 http://6hou.web.fc2.com/minzaisan/555-578.html

(売買)
555条  売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

贈与 http://6hou.web.fc2.com/minzaisan/549-554.html
(贈与)
549条  贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

(書面によらない贈与の撤回)
550条  書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。



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