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2007年08月14日

平成元年・刑法第2問

 A会社の技術職員甲は、同社が多額の費用を投じて研究開発した新技術に関する機密資料を保管し、時折は研究のため自宅に持ち帰っていた。B会社の社員乙は、A会社の機密を不正に獲得することを企て、甲に対し、その保管する当該資料のコピーの交付を依頼し、礼金の半額100万円を支払い、残りの100万円はコピーと引き換えに支払うことを約束した。甲は、コピーを作成する目的で当該資料を一旦社外に持ち出し、近くのコピーサービスでコピーを一部作成し、30分後に当該資料を会社の保管場所に返却した。その後甲は、発覚をおそれてそのコピーを渡さずにいたが、乙に督促されたため、個人的に所有する別の資料のコピーをA会社の機密資料のコピーであると偽って乙に渡し、残金の100万円を受け取った。
 甲及び乙の罪責を論ぜよ。

 上記問題の答案をメール経由で、一通980円で添削します。
 添削申し込み方法は下記リンク(解答・解説・関連知識・関連条文)をクリックしてご覧ください。
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 受験新報紙上答案練習会にて幾度も優秀答案・参考答案に選ばれ、(新・旧)司法試験合格者による答案練習会においてしばしば高い評価を受けてきた当サイト管理人が、一通980円で添削します。

 答案作成者の個性を尊重するためざっくりとした添削になりますが、予備校の添削とは異なり、反対説・論点(論証ブロック)の詳細な論述よりも、論理の流れ・文章表現の簡潔さを重視して添削します。

ロー入試・新司法試験合格にとって非常に重要な文章作成能力・答案作成能力を向上させるのためにも第三者に添削をしてもらうことは非常に重要です。

 法科大学院(ロースクール)では、新司法試験突破のために必要不可欠な文章作成能力・答案作成能力のためのトレーニングはほとんど行われません。

 法科大学院(ロースクール)では決して受けられない文章作成能力・答案作成能力のためのトレーニングとして、答案添削を受けることは新司法試験突破にとって非常に効果的なな手段です。

 自分で書いた答案の良い点・悪い点を他者の目を通じて評価してもらうことは、文章作成能力・答案作成能力を向上させる上でとても重要です。

 申し込み方法は下記の通りです

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2.下記バナーをクリックして、PayPalにて980円を支払ってください(クレジットカード使用可、一度送金された金銭は理由の如何を問わず返却できかねます)。



3.このメールフォームに、あなたの氏名・(上記2の支払いにて使用した)メールアドレス・選択した問題の科目名・年度・第一問か第二問かの区別、上記問題の答案を記入し、送信ボタンを押してください(送信前に必ず、PayPalにて980円を支払ってください。支払っていただけないと、添削ができませんのでご注意ください)。

4.答案を添削の上、後日(およそ数日から2週間後)、(上記2の支払いにて使用した)メールアドレス宛てに添削した答案をメールにて送信します(yahoo.co.jpドメインからメールを送信しますので、メーラー等はyahoo.co.jpドメインを受信拒否にしないようにお願いします)


答え

甲の罪責
1.機密資料をコピー目的で一時社外に持ち出す行為=業務上横領罪(253条)

 機密資料の所有権=A会社(委託者) ∵機密資料=同社が多額の費用を投じて研究開発した新技術に関する機密資料 →機密資料=他人の物

 機密資料の占有(=濫用のおそれある支配力)=甲(受託者) ∵甲は……機密資料を保管し、時折は研究のため自宅に持ち帰っていた
 →機密資料=自己の占有する物

 横領=委託の趣旨に背いてその物につき権限がないのに、所有者でなければできない処分をする意思が外部に現れること

 機密資料をコピー目的で一時社外に持ち出す行為=(コピーの譲渡によって機密資料の内容が外部に流出しうる行為なので)機密資料を機密資料でなくしてしまう行為
 甲・A会社間の委託の趣旨=甲の研究のため
 甲は機密資料を保管し、時折は研究のため使用する権限しかない
  →甲には(機密資料のコピーを第三者に譲渡することによって)機密資料を機密資料でなくしてしまう権限がない
   →機密資料をコピー目的で一時社外に持ち出す行為
     =そのA会社(委託者、所有者)にしかできない処分をする意思が外部に現れる行為
     =横領行為
 
 甲=A会社の技術職員
   →「業務(=社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務)」にあたる

 →機密資料をコピー目的で一時社外に持ち出す行為=業務上横領罪(253条)
2.別の資料のコピーをA会社の機密資料のコピーであると偽って乙に渡し、残金の100万円を受け取った行為=詐欺罪(247条1項)
 
 欺く行為=別の資料のコピーをA会社の機密資料のコピーであると偽って乙に渡す
 
 (欺く行為に基づく)錯誤・交付行為=(甲から交付された別の資料のコピーをA会社の機密資料のコピーであると誤認して)乙は残金の100万円を甲に渡す
 (交付行為による)財物・利益の取得=甲は残金の100万円を受け取った

 しかし、残金の100万円=不法原因給付(民法708条)
  →民法上は乙に不当利得返還請求権ない→詐欺罪不成立とも
  しかし、民法と刑法の立法目的が別々(私人間の利害調整/法益保護)+民法上保護されずとも刑法上保護すべき利益がある+窃盗犯・強盗犯からの詐取との均衡
  →残金の100万円=不法原因給付(民法708条)でも詐欺罪成立

 →別の資料のコピーをA会社の機密資料のコピーであると偽って乙に渡し、残金の100万円を受け取った行為=詐欺罪(247条1項)

3.罪数・結論
 甲の罪責=業務上横領罪の共同正犯(60条(これについては後述の通り)・253条)+詐欺罪(247条1項)の単独犯
  両者は併合罪

乙の罪責
 B会社の社員乙は、A会社の機密を不正に獲得することを企て、甲に対し、その保管する当該資料のコピーの交付を依頼し、礼金の半額100万円を支払い、残りの100万円はコピーと引き換えに支払うことを約束した行為=単純横領罪の共同正犯(60条・65条・252条)

 共同正犯(60条)の本質(一部行為全部責任)
  =二人以上の者が他者の行為を相互に利用補充し合うことで法益侵害惹起の危険を高めること
   →共同正犯の成立要件=@共同実行の意思+A共同実行の事実

 業務上横領罪は身分犯
  65条の「共犯」に共同正犯は含まれる(∵身分のない者も身分のある者を通じて法益侵害可能)

@共同実行の意思 B会社の社員としてA会社社員の協力の下にA会社の機密を不正に獲得する意思
A共同実行の事実 甲に機密資料のコピー交付を依頼、礼金の半額を支払い、これを受けて甲は横領行為実行
 →乙=甲の業務上横領罪につき共同正犯

Q.では、乙には何罪の共同正犯が成立するか?
 65条1項2項の関係、65条1項は身分のない者も共犯とする一方で65条2項は非身分者に通常の刑を科すとしているように、1項は連帯的に2項は個別的に扱うとしているが両項の関係をいかに理解すべきかが問題になる。

 1項を共犯の成立について2項を不真正身分犯の科刑についての規定とする見解、犯罪の成立と科刑を分離するので妥当でない

 条文上、1項は「身分によって構成すべき犯罪」、2項は「身分によって特に刑の軽重があるとき」としている
 →前者=真正身分犯、後者=不真正身分犯を予定

 +真正身分犯の身分は行為の違法性に、不真正身分犯は行為者への非難可能性に、それぞれ影響を与える身分
  →前者に対して連帯的に、後者に対しては個別的に扱うのが適当

 →1項は真正身分犯に適用、2項は不真正身分犯に適用。
 
 業務上横領罪=「業務者」身分+「占有者」身分
  「業務者」身分=(この身分ないと単純横領罪→行為者への非難可能性を左右→)不真正身分犯
  「占有者」身分=(この身分ないと横領罪は成立しない→行為の違法性を左右→)真正身分犯

 →業務上横領罪の共犯、単純横領罪の共同正犯が成立する
  →乙の行為=単純横領罪の共同正犯(60条・65条・252条)

関連条文

http://6hou.web.fc2.com/keihou/235-257.html

(詐欺)
246条1項  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
246条2項  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(横領)
252条1項  自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
252条2項  自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

(業務上横領)
253条  業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。


http://6hou.web.fc2.com/keihou/60-65.html

(共同正犯)
60条  二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

(身分犯の共犯)
65条1項  犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
65条2項  身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

関連知識

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 横領罪(252条)の構成要件要素・定義
http://crime-code.seesaa.net/article/51343478.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 業務上横領罪(253条)の構成要件要素・定義
http://crime-code.seesaa.net/article/51343915.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 業務上横領罪の共犯には何罪の共同正犯が成立するか
http://crime-code.seesaa.net/article/51344337.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 詐欺罪(247条)の構成要件要素
http://crime-code.seesaa.net/article/51344515.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 詐欺罪と不法原因給付
http://crime-code.seesaa.net/article/51344776.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 共同正犯(60条)の本質(一部行為全部責任)
http://crime-code.seesaa.net/article/51345018.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 65条の「共犯」に共同正犯は含まれる
http://crime-code.seesaa.net/article/51345224.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 65条1項2項の関係
http://crime-code.seesaa.net/article/51345501.html




タグ:刑法
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