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2007年08月23日

平成16年・刑事訴訟法第1問

 警察官は,被疑者甲及び乙について,Aをナイフで脅迫し現金を奪った旨の強盗の被疑事実により逮捕状の発付を得た。
 1 警察官は,甲を逮捕するためその自宅に赴いたが,甲は不在であり,同居している甲の妻から,間もなく甲は帰宅すると聞いた。そこで,警察官は,妻に逮捕状を示した上,甲宅内を捜索し,甲の居室でナイフを発見し,差し押さえた。この捜索差押えは適法か。
 2 警察官は,乙の勤務先において逮捕状を示して乙を逮捕し,その場で,乙が使用していた机の引き出し内部を捜索したところ,覚せい剤が入った小袋を発見した。警察官はこれを押収することができるか。


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答え

小問1
1.問題提起
 本問の捜索差押え=逮捕に伴う捜索差押(220条1項2号)

 しかし、被疑者はまだいない、かつ、捜索範囲は甲宅内全体
 →「逮捕するとき」(220条1項2号)を満たず、かつ、捜索差し押さえできる範囲を逸脱しているので、本問の捜索差押えは220条1項2号違反か
  それとも、「逮捕するとき」(220条1項2号)を満たし、かつ、捜索差し押さえできる範囲内であるので適法か。
  「逮捕するとき」(220条1項2号)の意義、逮捕に伴う捜索差押(220条1項2号)で捜索差し押さえできる範囲が問題

2.規範定立
 逮捕に伴う捜索差押(220条1項2号)の趣旨
  =逮捕現場には被疑事実に関する証拠物の存する蓋然性があり、逮捕の要件を充足する場合には通常、捜索差押許可状発布の要件も充足していると言える上、証拠隠滅防止のため

→ 捜索差し押さえできる範囲=被逮捕者の同一管理権が及ぶ範囲
  「逮捕するとき」=逮捕との時間的接着性は必要、でも逮捕の先後は不問

3.あてはめ・結論
「逮捕するとき」について
  「同居している甲の妻から,間もなく甲は帰宅すると聞いた。」
    →逮捕との時間的接着性はある
    →「逮捕するとき」にあたる

 捜索差し押さえできる範囲、について
  本問の捜索差押えの範囲=甲宅内
  甲宅内=被逮捕者(=甲)の同一管理権が及ぶ範囲
  →本問の捜索差押えの範囲=捜索差し押さえできる範囲内

 →本問の捜索差押え=適法

小問2
1.問題提起
 本問の捜索=逮捕に伴う捜索(220条1項2号)
 逮捕状の被疑事実=強盗
 ところが、覚せい剤が入った小袋=覚せい剤所持の証拠物

 220条1項2号に基づいて(逮捕状の被疑事実とは異なる)別件の証拠物を差し押さえることができるかが問題。
2.規範定立
 220条1項2号の趣旨
 +緊急逮捕の規定(210条1項)があるのに緊急差し押さえの規定がない
   →220条1項2号に基づいて(逮捕状の被疑事実とは異なる)別件の証拠物を差し押さえることはできない

 もっとも、if別件の証拠物=法禁物
  →その法禁物所持の被疑事実で現行犯逮捕して、その現行犯逮捕に伴う差し押さえ(220条1項2号)で法禁物を差し押さえればいい。

3.あてはめ
 覚せい剤=法禁物
  →その覚せい剤所持の被疑事実で現行犯逮捕(212条1項)して、その現行犯逮捕に伴う差し押さえ(220条1項2号)で覚せい剤を差し押さえることができる。
 →乙を覚せい剤所持の被疑事実で現行犯逮捕(212条1項)すれば、覚せい剤が入った小袋を220条1項2号に基づいて差し押さえることができる。

関連条文

http://6hou.web.fc2.com/keiso/189-229.html

第二百二十条
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
一 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。
2 前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない。
3 第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
4 第一項第二号及び前項の規定は、検察事務官又は司法警察職員が勾引状又は勾留状を執行する場合にこれを準用する。被疑者に対して発せられた勾引状又は勾留状を執行する場合には、第一項第一号の規定をも準用する。

第二百十条
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2 第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。

第二百十二条
 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

第二百十三条
 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

関連知識

刑事訴訟法教室 ―フリー・ロースクール版: 逮捕に伴う捜索差押
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/50898177.html

刑事訴訟法教室 ―フリー・ロースクール版: 220条1項2号に基づいて(逮捕の被疑事実とは異なる)別件の証拠物を差し押さえることができるか
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/52421164.html
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