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2007年08月29日

平成元年・刑事訴訟法第1問

 警察官等は、暴力団幹部甲が野球賭博をしたという賭博開帳図利被欺事件につき、客からの注文を書き留めたメモ類を差押目的物とする捜索差押令状により右暴力団事務所を捜索した。その際、居合わせた同暴力団組員乙が落ち着かない様子を示して立ち去ろうとしたので、警察官らは、呼び止めたうえ、乙が持っていたバッグをあけて見せるよう求めたが、乙はこれに応じようとしなかった。そこで、警察官の1人が、バッグのチャックを開けて、その中を見たところ、けん銃1丁が入っていたので、乙を銃砲刀剣類所持等取締法違反の現行犯で逮捕した。
 この警察官等の行為は適法か。

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 答案作成者の個性を尊重するためざっくりとした添削になりますが、予備校の添削とは異なり、反対説・論点(論証ブロック)の詳細な論述よりも、論理の流れ・文章表現の簡潔さを重視して添削します。

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答え


1.問題提起、「警察官の1人が、バッグのチャックを開けて、その中を見た」=(職務質問に付随する)所持品検査として適法か、違法か
 所持品検査の可否、要件が問題

 規範定立
所持品検査 職務質問に付随してできる
 ∵職務質問と密接に関連し、職務質問の効果あげるために必要かつ有効な行為

 原則、所持品検査は、任意捜査である職務質問の付随行為なので、所持人の承諾が必要
 しかし、承諾なしには一切不可では、行政警察目的の達成不可
 →捜索に至らない行為で、強制にわたらない限りは、承諾なしの所持品検査は可
 しかし、常に可ではない(憲法35条との関係で)
 要件  
  限定的な場合において@所持品検査をする必要性A緊急性Bこれによって侵害される個人の法益とこれによって実現される公共の利益の権衡などを考慮してC具体的な状況において相当と認められる限度においてのみ可

 あてはめ
@所持品検査をする必要性
  居合わせた同暴力団組員乙が落ち着かない様子を示して立ち去ろうとした
    →警察官に知られたくない物を持っている合理的疑い→必要性あり
A緊急性
  立ち去ろうとした
   →立ち去られたら、もう中身を確かめることが事実上できない→緊急性あり
Bこれによって侵害される個人の法益とこれによって実現される公共の利益の権衡などを考慮して
  バックの中身を知られる=プライバシー侵害
   しかし、バックは施錠されていない、チャックを開くだけで中身を見ることのできるバッグ
    警察官、バックのチャックを開けて中を一瞥しただけ
   →プライバシー侵害の程度は軽い、
C具体的な状況において相当と認められる限度
   警察官、バックのチャックを開けて中を一瞥しただけ=相当と認められる限度内

2.問題提起、(仮に所持品検査として違法のとき)「警察官の1人が、バッグのチャックを開けて、その中を見た」=捜索差押令状に基づく捜索として適法か、違法か
 その場に居合わせた人物の所持品(や身体着衣)に対する捜索は適法か違法かが問題

 規範定立
 捜索場所、住居等と身体とは区別されている→不可?
 しかし、たまたま住居等にある物を所持するだけで、捜索対象から外れるのは、捜索の実効性を失わせてしまう点で実態的真実発見の見地から妥当でない。+捜索場所にある物、すべて捜索対象になる
 →捜索の目的物を所持していると認めるに足りる客観的な状況が存在する特段の事情がある場合、所持品(や身体着衣)に対する捜索は適法

 あてはめ
 (警察官による捜索中に)居合わせた同暴力団組員乙が落ち着かない様子を示して立ち去ろうとした
   →捜索の目的物を所持していると認めるに足りる客観的な状況が存在する特段の事情がある
→捜索差押令状に基づく捜索として適法

3.乙を銃砲刀剣類所持等取締法違反の現行犯で逮捕した
 けん銃=法禁物
  →被疑事実あり、現行犯逮捕の要件を満たす。
   →適法

関連条文

http://6hou.web.fc2.com/keishoku.html
警察官職務執行法
(質問)
第二条  警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

http://6hou.web.fc2.com/keiso/189-229.html
第二百十二条
 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

第二百十三条
 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

第二百十八条
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押、捜索又は検証をすることができる。この場合において身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
2 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、前項の令状によることを要しない。
3 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。
4 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
5 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。


第二百十九条
 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押えるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
2 第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。

関連知識

刑事訴訟法教室 ―フリー・ロースクール版: 職務質問、所持品検査
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/46289109.html

刑事訴訟法の基本判例 H6.9.8
http://keijicase.shisyou.com/H6.9.8.html

刑事訴訟法教室 ―フリー・ロースクール版: 現行犯逮捕(法212-1)
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/47235109.html

刑事訴訟法教室 ―フリー・ロースクール版: 220条1項2号に基づいて(逮捕の被疑事実とは異なる)別件の証拠物を差し押さえることができるかhttp://criminal-procedure.seesaa.net/article/52421164.html




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