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2007年09月02日

平成18年・刑事訴訟法第2問

 甲は,交差点において赤色信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し,通行人を死亡させたとして,危険運転致死罪で起訴された。公判において,検察官は,事故を目撃したAを現場に立ち会わせて実施した実況見分の結果を記載した司法警察員作成の実況見分調書の証拠調べを請求したところ,甲の弁護人は,「不同意」との意見を述べた。
 その実況見分調書には,@道路の幅員,信号機の位置等交差点の状況,AAが指示した自動車と被害者の衝突地点,B甲の自動車が猛スピードで赤色信号を無視して交差点に進入してきた旨のAの供述,が記載されていた。 裁判所は,この実況見分調書を証拠として取り調べることができるか。

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答え

1.問題提起
 実況見分調書を証拠として取り調べるためには、証拠裁判主義(317条)の下、実況見分調書に証拠能力が必要
 証拠能力=自然的関連性+法律的関連性+違法収集証拠でないこと

実況見分調書=伝聞証拠
 かつ、「甲の弁護人は,「不同意」との意見を述べた」 (→326条の適用ありえない)
 →伝聞法則(320条1項)によって実況見分調書には原則、証拠能力なし

 しかし、伝聞法則の趣旨

 伝聞例外なら証拠能力ありとも

実況見分調書、321条3項準用で証拠能力あり
  ∵321条3項「検証」、実況見分も含む(∵両者は五感の作用により対象の性質・形状を知覚する捜査方法という性質で共通、違いは強制処分か任意処分かだけ)
(なお、「真正に作成」=作成名義の真正+記載内容の真正)

しかし、実況見分調書内に記録された第三者の言動=再伝聞(→第三者の言動が伝聞証拠ならば、321条1項3号・324条1項の適用が必要になる)
 そこで、実況見分調書内に記録された第三者の言動が再伝聞になるか否かの判断基準が問題となる。

2.規範定立
 if 第三者の言動=現場指示、知覚する対象の手がかりを与えるにすぎない(指示内容の真実性は問題にならない)
     →第三者の言動(=現場指示)=非伝聞

 if 第三者の言動=現場供述、(立証趣旨たる)供述内容の真実性が問題になる
    →第三者の言動(=現場供述)=伝聞証拠(→321条1項3号・324条1項の適用がない限り証拠能力が認められない)

3.あてはめ
@道路の幅員,信号機の位置等交差点の状況,
 実況見分を行った者が五感の作用により知覚した対象の性質・形状そのもの
  →(作成者が作成名義の真正と記載内容の真正を証言すれば)321条3項準用で証拠能力あり

AAが指示した自動車と被害者の衝突地点
  =現場指示=非伝聞
  →(作成者が作成名義の真正と記載内容の真正を証言すれば)321条3項準用で証拠能力あり
 
B甲の自動車が猛スピードで赤色信号を無視して交差点に進入してきた旨のAの供述
  =現場供述=伝聞証拠(→321条1項3号の適用がない限り証拠能力が認められない)
本問事例の場合、Aの署名・押印が実況見分調書にない限り(ふつう、第三者の署名・押印はない)
  実況見分調書のうちBの部分は321条1項3号・324条1項の要件を欠く→320条1項によって証拠能力なし

→裁判者は、実況見分調書のうち、@Aの部分は(作成者が作成名義の真正と記載内容の真正を証言すれば)321条3項準用で証拠能力は認められるので証拠として取り調べることができるが、Bの部分は、Aの署名・押印が実況見分調書にない限り、320条1項により証拠能力ないので、証拠として取り調べることができない。

関連条文
モバ!六法 刑事系 刑事訴訟法 証拠
http://6hou.web.fc2.com/keiso/317-328.html
第三百十七条
 事実の認定は、証拠による。

第三百二十条
 第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
2 第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。


第三百二十一条
 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異つた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。
2 被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
3 検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
4 鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。

第三百二十二条
 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
2 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。


第三百二十四条
 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用する。
2 被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人以外の者の供述をその内容とするものについては、第三百二十一条第一項第三号の規定を準用する。
第三百二十六条
 検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第三百二十一条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。
2 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる場合において、被告人が出頭しないときは、前項の同意があつたものとみなす。但し、代理人又は弁護人が出頭したときは、この限りでない。

関連知識

検証調書・実況見分調書内の被告人(第三者)の言動は、再伝聞になるかどうかの判断基準
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/52576496.html

犯行状況再現報告書
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/52576831.html

実況見分調書と伝聞法則
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/52577203.html

伝聞法則、伝聞証拠、非伝聞、伝聞例外、再伝聞
http://criminal-procedure.seesaa.net/article/52014736.html

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