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2007年09月02日

平成8年・刑法第1問

 甲および乙は、友人Aに対して、2人で殴る蹴るの暴行を加え、傷害を負わせた。甲および乙は、Aを甲のアパートに連れて行き、傷の手当てをしていたが、Aが次第に高熱を発し、意識もうろうの状態になったため、Aが死亡するかもしれないと思ったものの、発覚を恐れ、放置しておくこととした。しかし、その後、乙は、Aがかわいそうになり、甲の外出中にAを近くの病院に運び込み、看護婦に引き渡した。ところが、当時、その病院の医師が、たまたま外出中であったため、手遅れとなり、Aは、甲及び乙の暴行による内臓の損傷が原因で死亡してしまった。
 甲及び乙の罪責を論ぜよ。

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 添削申し込み方法は下記リンク(解答・解説・関連知識・関連条文)をクリックしてご覧ください。

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 答案作成者の個性を尊重するためざっくりとした添削になりますが、予備校の添削とは異なり、反対説・論点(論証ブロック)の詳細な論述よりも、論理の流れ・文章表現の簡潔さを重視して添削します。

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4.答案を添削の上、後日(およそ数日から2週間後)、(上記2の支払いにて使用した)メールアドレス宛てに添削した答案をメールにて送信します(yahoo.co.jpドメインからメールを送信しますので、メーラー等はyahoo.co.jpドメインを受信拒否にしないようにお願いします

答え
甲の罪責
(1)問題提起
暴行を加え、傷害を負わせた+Aは甲及び乙の暴行による内臓の損傷が原因で死亡→傷害致死罪(205条)か
それとも、Aが死亡するかもしれないと思った(=未必の殺意)ものの、発覚を恐れ、放置しておくこととした→殺人罪(199条)か
 不真正不作為犯の成否・要件が問題に
(2)規範定立
実行行為
 =法益侵害の現実的危険性を惹起する(社会的相当性を欠く)行為

そして、不作為でも作為犯の法益を侵害できる
 →不真正不作為犯は成立しうる。

 しかし、それではあまりに処罰範囲が広がりすぎる。

 そこで、
@作為義務
A作為が可能かつ容易
B不作為が価値的に作為と同視できる

 場合に限り、不真正不作為犯は成立する。

 そして作為義務の有無は、法令・契約・事務管理・条理(先行行為、引き受け、排他的支配の設定など)等に基づいて判断される。

(3)あてはめ
 傷害を負わせた=先行行為
  →@作為義務、あり
 Aを病院に連れて行くことが不可能ないし困難な事情がない
  →A作為が可能かつ容易
 Aを甲のアパートに連れて行く=Aを第三者の手の届かない場所に移す=甲・乙だけがAの生死をコントロールできる
 Aが次第に高熱を発し、意識もうろうの状態になった=症状が悪化
 なのに、Aを放置しておくこととした→B不作為が価値的に作為と同視できる

 →殺人罪(199条)成立、乙とは共同正犯(60条)の関係

乙の罪責
(1)問題提起
 甲と同様に殺人罪(199条)成立、甲とは共同正犯(60条)の関係
 乙は、Aがかわいそうになり、甲の外出中にAを近くの病院に運び込み、看護婦に引き渡した
  →(Aは死亡していても)中止犯は成立するか
  中止犯(43条但書)の成立要件「自己の意思により」「犯罪を中止した」の意義が明文を欠くので問題
(2)規範定立
「自己の意思により」の意味
 中止犯は客観的には未遂と同視できるのに、未遂と異なり刑の免除が認められている。それは行為者が犯罪の完成を思いとどまったから。
 →中止犯の必要的減免の根拠は、中止行為により行為者への非難可能性が減少する点に着目した、責任軽減事由である。

  しかし、自己の意思を広く捉えると安易な刑の減免を認めることになりかねない
  →行為者への非難可能性が減少するといえる程度でなければならない
   →「自己の意思により」=悔悟の念に基づく

「犯罪を中止した」の意味
 着手未遂(実行行為完了前の未遂)の場合、実行行為を止める=「犯罪を中止した」
 実行未遂(実行行為完了後の未遂)の場合
  結果発生防止のための真摯な努力(中止行為)をした=「犯罪を中止した」(∵中止犯(43条但書)の法的性格=責任軽減事由、行為者への非難可能性が減少する点に着目+結果発生の危険が差し迫っているものの安易な刑の減免を防ぐ必要性)

 しかし、中止犯(43条但書)=未遂の一種
  →結果発生した場合には、中止犯(43条但書)適用の余地なし
(3)あてはめ
 当時、その病院の医師が、たまたま外出中であったため、手遅れとなり、Aは、甲及び乙の暴行による内臓の損傷が原因で死亡してしまった=結果発生した
 →中止犯(43条但書)成立しない
 →甲と同様に殺人罪(199条)成立、甲とは共同正犯(60条)の関係

関連条文
モバ!六法 刑事系 刑法違法性阻却事由、未遂、財数処理http://6hou.web.fc2.com/keihou/35-59.html

(未遂減免)
第四十三条  犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

モバ!六法 刑事系 刑法共犯
http://6hou.web.fc2.com/keihou/60-65.html

(共同正犯)
第六十条  二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

モバ!六法 刑事系 刑法殺人、傷害、業過
http://6hou.web.fc2.com/keihou/199-211.html

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(傷害致死)
第二百五条  身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

関連知識

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 実行行為http://crime-code.seesaa.net/article/47696636.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 不真正不作為犯の成否http://crime-code.seesaa.net/article/48876006.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 中止犯の根拠
http://crime-code.seesaa.net/article/49135060.html

刑法教室 ―フリー・ロースクール版: 中止犯(43条但書)の成立要件「自己の意思により」「犯罪を中止した」
http://crime-code.seesaa.net/article/52554933.html


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