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2007年09月05日

平成2年・民法第2問

 Aは、B所有の茶器を所有していたところ、Cから100万円を借り受けるにあたり、この茶器をCに質入れした。
1 この茶器は、AがBから預かっていたのに過ぎないのに、Bの承諾なしに、自己のものとしてCに質入れをしたものであった場合に、Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。次の三つの場合のそれぞれについて検討せよ。

(一) 現在、Cが茶器を所持している場合
(二) 質権の設定後にAの懇願を受けてCがこの茶器をAに引き渡し、現在は、Aがこれを所持している場合
(三) Cから茶器の引渡しを受けたAがこれを更にBに返還し、現在は、Bがこれを所持している場合

2 この茶器は、AがBに貸し付けた50万円の貸金債権の担保のためにBからAに質入されたもので、これを、AがBの承諾なしに更にCに質入れしたものであった場合に、Cは、自己の質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。

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答え
小問1(一)
Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるためには
B所有の茶器にCの質権が成立していなければならない
ところが、質入れしたAは無権利者→本来なら質権が成立しないはず
しかし、茶器=動産、かつ質権=「権利」(192条)
  →質権の即時取得(192条)ができるとき、例外的にの質権が成立する→Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができる
 この茶器の場合
  占有者BC間の質権設定契約
  質権設定契約に基づく引渡し がある
善意・公然・平穏は186条1項により暫定真実として推定される。
無過失は188条によって占有者が通常、権利者であると推定される

 →質権の即時取得(192条)あり→Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができる

小問1(二)
 質権の即時取得(192条)後、質物を設定者に引き渡す
 質権は「目的物を引き渡すこと」(344条)によって効力が発生する
  →設定者に引き渡すことで質権は消滅したといえるか。それとも、消滅していないかが質権の実行ができるかどうかが左右されるので問題
  
 (352条は占有を対抗要件として扱う→一旦発生した質権は設定者に引き渡しても消滅しないとも、しかしこれでは権利関係が複雑化する)
質権の本質=目的物を占有する留置的効力
   →留置的効力ない質権、心理的圧迫によって弁済を強制することができない→質権として機能しない
  →設定者に引き渡すことで質権は消滅する

 →CはAに引き渡した時点で質権を失う
 →Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができない

小問1(三)
 質権の即時取得(192条)後、質物は第三者たるAの手に
 →(小問1(二)同様)CはAに引き渡した時点で質権を失う→Bの手に渡っても質権復活しない
 →Cは、質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができない

小問2
2 この茶器は、AがBに貸し付けた50万円の貸金債権の担保のためにBからAに質入されたもので、これを、AがBの承諾なしに更にCに質入れしたものであった場合に、Cは、自己の質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができるか。
 責任転質によってCが茶器を占有
 if責任転質よって把握した価値=茶器の価値(=100万円) →Cは、自己の質権の実行により、100万円の貸金債権の弁済を受けることができる
 if責任転質よって把握した価値=茶器に設定されたAの質権の価値(=50万円) →Cは、自己の質権の実行により、50万円の貸金債権の弁済を受けることができるにすぎない
 →f責任転質よって把握した価値は、動産の価値か、動産に設定されていた質権の価値かが問題

348条を素直に読めば「質物をさらに質に入れる」→責任転質よって把握した価値は、動産の価値とも
 しかし、転質すると転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う→転質権者の責任重過ぎる
 むしろ、当事者の合理的意思は、質権者が把握する価値に質権を設定する
  →責任転質よって把握した価値は、動産に設定されていた質権の価値

→Cは、自己の質権の実行により、50万円の貸金債権の弁済を受けることができるにすぎない

関連条文

モバ!六法 民事系 民法・財産法 占有権、占有訴権、準占有
http://6hou.web.fc2.com/minzaisan/180-205.html

(即時取得)
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

(占有権の取得)
第百八十条  占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条  占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2  前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

(占有物について行使する権利の適法の推定)
第百八十八条  占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

モバ!六法 民事系 民法・財産法 質権http://6hou.web.fc2.com/minzaisan/342-368.html

(質権の設定)
第三百四十四条  質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

(転質)
第三百四十八条  質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。

関連知識

民法教室 ―フリー・ロースクール版: 設定者に引き渡すことで質権は消滅http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/53997093.html

民法教室 ―フリー・ロースクール版: 善意取得(即時取得)の趣旨http://minpou-lawschool.seesaa.net/article/50896636.html



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